子午流注法

子午流注法 肺経 寅の時間帯(3時~5時)の養生

寅の時間帯は夜中の3時~5時肺経の気が最も旺盛になる時間帯です。

肺は全身循環において非常に重要な役割を担っています。

肺の呼吸は全身の気の流れを主り、身体の水液を運んで余分なものを排泄する役割があります。

この役割が最も盛んになる時間帯が寅の時間帯3時~5時です。

寅の前の時間帯である丑の時間帯(1時~3時)は肝経の気が最も旺盛になる時です。

丑の時間帯に熟睡することによって肝臓で古い血液は淘汰され、新鮮な血液が産生されます。

また、肝臓の働きにより新陳代謝も良くしてくれます。

↓丑の時間帯については詳しくはこちらをどうぞ。

このような丑の時間帯の気の流れで、肺の気が最も盛んになる寅の時間帯は熟睡をすることにより肺の呼吸運動が最高になる時です。

肺に血液が供給されると肺の呼吸運動肝の疏泄が組み合わさって、全身に気血をめぐらせることができます。

そのため、寅の時間帯に熟睡していることは非常に大事なことで次の日のコンディションも整えることができます。

子(23時~1時)・丑(1時~3時)・寅(3時~5時)の時間帯共に熟睡する習慣をつけると早朝の顔色の血色が良好で潤いがあり、精力が充分にある状態を作ることができると言われています。

では、今回は寅の時間帯(3時~5時)に身体の中でどのようなことが起きているのか解説していきたいと思います。

寅の時刻と肺の働き

寅の時間帯は陽気が段々と発生してくる時間帯です。

陽気が生じてくる分、陰気が徐々に弱くなってくる時でもあります。

自然界や人の身体の気が静から動に変化していく時です。

陽の発生と共に肺を通して気血の循環が活発になりだす、肝とともに身体全体の疏泄も外に向かいだしてきます。

肺は“相傳の官”と呼ばれ心臓にある(生体の精神意識)から宣発・粛降で全身に気を送り込むよう命令を受ける臓器です。

そのため、この時間帯は肺の宣発・粛降、肝の疏泄機能が組み合わさって気血の運行を調整します。

すいません、専門用語だらけになってしまいました…。

ここで中医用語が分からない方のためにちょっと用語解説をします。この後の文にも以下の用語は出てきますのでご参考に…。

  • 肺の宣発(せんぱつ)とは呼吸で息を吐くことで、気を発散して体内の濁気を外に出します。
  • 肺の粛降(しゅくこう)とは呼吸で息を吸い込むことで、気が下降することによって外のキレイな気(清気)を体内に入れることができます。
  • 肝の疏泄とは気の巡りをスムーズにすることです。

寅の時間帯は肺の宣発・粛降、肝の疏泄この3つの作用が働く、最も身体の気血の循環が旺盛になる時間帯です。

寅の時間帯は新たな循環が作られる

肺は身体の気を主る役割があり、3時~5時は肺経が新たな気血の循環を開始します。

心臓にはどのくらいの気血が必要か、腎臓にはどのくらいの気血が必要か、全身の血液は必ず肺を通るので肺で計算がされます。

この新たな代謝は、肺で作られる過程で寅の時間帯に熟睡ができていないと完成することができません。

そのため、寅の時間帯に眠りが浅い、覚醒しやすい状態は肺気不足の症状です。

さらに肺経は寅の時間帯に他の臓器の経絡が活発になることを最も嫌います。

眠った状態にないと肺経の気は活発にはならないため、肺経は新たな気血の循環を作る働きを行わなくなる傾向があります。

またもう1点、寅の時間帯に大事な働きがあります。

肺の粛降(吸い込む動作)は清気を下降させることで、身体の気を下に向かせて内臓の内側に気を持っていく作用があります。

肺気が清気を粛降で下に降ろすことで身体の気と津液は下降し、体内の水液運行を通して清気(キレイな気)は腎臓に貯蔵され、余分な濁気(汚い気)は膀胱へ行き尿として体外へ排出することができます。

難しい文章になってごめんなさい…。

要は、肺の呼吸作用も活発になって呼吸によって体内の余分な濁気は尿になるように膀胱に持っていくキレイで身体に貯蓄しておきたい清気は腎臓に持っていく、という働きが強くなります。

このような肺の働きが強くなるのも寅の時間帯です。

寅の時間帯3時~5時は肺経の時間帯で全身の気血の循環、老廃物の排出にも大きく関与しているのです

そのため、夜中の3時~5時は肺の気の活動を邪魔しないために熟睡を心掛けると良いです。

熟睡できずにいると肺経が働かなくなり、臓器・全身への気血の供給のバランスが悪い状態となってしまいます。

寅の時間帯に気を付けたいこと

この時間帯は虚弱体質の人や子供は尿意を感じてトイレに行く、また、高齢者も眼を覚ましやすいもしくは咳などを発生しやすい時でもあります。

現れる症状は異なりますが、気血不足の体質が共通して影響しています。

特に肺に病気がある人は深刻で喘息やアレルギー性鼻炎もこの時間帯に生じやすい、と言われています。

中国の中医分野では心臓病の患者は寅の時間帯(3時~4時)の間に亡くなっている人が多い、というデータがあります。

原因は気血不足で肺経を通して気血が新たな代謝を作る働きが影響していると言われています。

前述の通り、寅の時間帯は肺で内臓の気血量が計算され、肺の宣発・粛降、肝の疏泄3つの働きにより気血の循環が最も旺盛になる時間帯です。

この働きは身体全身に作用するもので、寅の時間帯に気血の循環も変化するため危篤患者の死亡に関わっているのではないか、とされています。

また、日ごろから5時前に覚醒する習慣をつけてしまうと気血虚弱に傾いてしまうことにもなってしまいます。

そのため、《黄帝内経》では心臓病のある患者は日ごろ早朝に起きないように、ゆっくり起きることを習慣にすると良い、と書かれています。

持病で心臓病がある方、または気血不足で3時~5時に起きてしまうようなことがある方は、起きて行動を起こす前に5分間ほど寝たまま深呼吸を10回してからゆっくり座り、それからゆっくり立つようにして下さい。

寅の時間帯 養生ポイント

健康な人なら寅の時間帯は熟睡をしていると思います。

寅の時間帯に早朝覚醒をしてしまう方は、この時間帯は目を覚ましてもゆっくり呼吸をして肺気を養うように布団に横になったままが良いです。

また、夜中に熟睡できる習慣をつけることも大事です。

習慣を作る注意点として、12時前までパソコンやスマートフォンを見ていると興奮状態になりやすく睡眠にも影響してしまうと言われています。

現代人にありがちですが夜、熟睡しなくてはいけない時間に起きて作業をしていた場合、身体に負担がかかって疲れやすい身体となってしまいます。

夜中の3~5時は時間帯的に見ても朝に近いので健康にあまり支障がないと思われがちですが、身体の気血循環が作られる大事な時間帯ですので、この時間帯も睡眠状態に入っていることが健康な身体を作る養生には大事なことです。

夜11時前には寝る習慣をつけて夜中の3時~5時は深い睡眠を取れるように心がけてみて下さい。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。