東洋医学を学ぶ上で陰陽五行説は基礎となります。
私自身中国で中医師から基礎・臨床を学んでいた当時、中医の知識が増えるにしたがって陰陽五行と中医臨床の関連性がよく分からない……と疑問に思ったことがありました。
そんな中、広州中医薬大学教授の趙先生と一緒に講座を作ることになり、趙先生に資料を作っていただきました。すると、陰陽五行のスライドだけで物凄い量を作ってくれていて…編集に困ったという記憶がありますが、
陰陽五行説は中医の基礎であり必要不可欠、ということに気づかされました。
それに師である李医師の中医の教えが進むに従い、弁証論治に陰陽説・五行説の知識がないと付いていけなかったので必死に予習・復習をした覚えがあります。
私の知っている範囲ではありますが、解説をしていきたいと思います。
陰陽説と五行説の融合が陰陽五行
易占いを知っている方はある程度ご存じかと思いますが、易とは陰陽説のことです。
陰陽説 世の中のあらゆる事象(森羅万象)を陰と陽にとらえる
稲田義行「幸運を招く陰陽五行」より引用
とあるように、陰と陽は記号で表現します。
中国語表記ですが左が陽、右が陰の記号となります。
中国の中医学基礎の教科書は宇宙・生命の誕生の流れを陰・陽で詳しく解説しています。
ちなみに宇宙の誕生、生命の誕生は混沌とした陰・陽気のビックバンによって起きています。
しかし、陰陽の2つで分けられるほどこの世は単純ではありません。そこで後に五行説ができてきます。
五行説 世の中の事象や物事を〈水火木金土〉でとらえる。
稲田義行「幸運を招く陰陽五行」より引用
万物を陰陽の2つに分ける考え方ではなく〈木火土金水〉の五の要素に配当する考え方です。
東洋医学を学んでいるとお馴染みのものになります。
陰陽五行説とはこの陰陽説と五行説を融合したものとなっています。
では今回は陰陽学説について詳しく見ていきたいと思います。
陰陽学説と中医学
古代中国人はすべての事象を陰と陽の相対する二つに分けて捉え、両者が対立・制約しながら存在していると捉えていました。
自然界の陰と陽の調和がとれていれば平和であり、心身の陰と陽のバランスが保たれていれば健康状態が良いとされていました。
逆に体の中で陰陽のバランスが崩れると病気になると考えられ、中医学では陰陽のバランスを取り戻すことに主眼を置いています。
↑上図が陰陽の属性を表したものです。それぞれ陰陽対立するものが配当されているのが分かります。
陰陽学説と中医学の応用
陰陽学説は以下のように中医臨床では応用されます。
・人体の属性を説明する
五臓は陰に属し、六腑は陽に属する。
五臓は〈心、肺、肝、脾、腎〉。六腑は〈小腸、大腸、胆臓、胃、膀胱〉。
・人体の生理機能を説明する
正常の生命活動——陰陽のバランスがとれている
病気になる——陰陽のバランスが崩れている
・疾病の病理変化を説明する
陰陽偏盛、陰陽偏衰など
・疾病の診断に応用する
ちなみに中国の老中医師が身体の状態を表現する際、このような記号で表現することがあります。
この図が健康な身体を表現したものです。
紹介しましたが、上図を私はまだ解説できるレベルにありません。ごめんなさい…。
・疾病の予防と治療に応用する
◆養生を指導する
春夏に陽を養い、秋冬は陰を養う。
季節に合った食材を食べる、時期に合った心の在り方をすることで邪を寄せ付けない心身にすることができます。
◆疾病の治療
治療原則を確定させる。
陰陽のバランスを調整し、足りない部分を補い、過剰の部分を減らす事により、陰陽バランスがうまく保たれ、健康を維持していきます。
ザッとどのように応用されているか並べていきましたが、このように陰陽学説は中医診断、治療に活用されています。人を診るうえで陰陽五行の属性、偏り、そして全体的な陰陽バランスを見極めることが中医の治療家に必要な能力なのかもしれません。
中医を勉強している方は分かると思いますが、このバランスを見極めるのに膨大な勉強量・経験値を必要とします。中国では
「中医師は50歳からやっとスタートラインに立てる」
と言われています。中国の友人も両親にこう言われたそうです。
「中医師にかかる時は年配のお医者さんを選びなさい。若い人はダメ」と。
李医師に「中医の世界はお坊さんの世界ですね」と言うと「その通り」という回答が返ってきました。
う~む、奥深すぎる…。
次の機会に五行学説と中医学について書きたいと思います。