陽気とは陰陽の属性で見ると推動・興奮・上に上がる・発する・温煦といったものが当てはまります。
人を表す表現で「陽気」という言葉がありますが活発で外交的な人を表しますよね。
人の身体の陽気も同様、活発・上・外・温煦といった働きがあります。
この人体の陽気は養生を語る上では非常に重要視されていて、中国語で“得陽則生,失陽則死”と言われています。
陽気があると人は生きられる、陽気を失うと人は死んでしまう、という意味です。
中医学では自然界・人の身体は小宇宙に例えられていて宇宙の原則に従って生きている、と語られています。
では、陽気を身体の“活力”とした場合、この活力は人の生命と密接に関連しています。
今回は、人体の陽気にスポット当てて養生の基盤となる陽気について解説していこうと思います。
陽気が大事な理由
陽気は自然界・万物の生命の源です。
もし、身体の陽気を失ってしまうと身体の正常性は保たれずに身体本来の能力・役割が果たせなくなってしまいます。
このようになってしまうと寿命は短くなり、天寿を全うできなくなってしまいます。
身体が弱くなってしまう、衰えが早くなってしまう為、与えられた寿命よりも早く亡くなってしまうのです。
もちろん病気に罹りやすくなってしまいます。
では、この点を踏まえて自然界の陽気の動きと人体の陽気を見ていきます。
人の陽気は自然界における太陽の役割と同じ重要なものです。
空の太陽の動きは正常であると、日中は太陽の光が大地に降り注ぐことによって地面は光が照らされ、万物の陽気は活発となります。
人の身体も同じように陽気は身体の上そして外側にあるもので、身体の表面を覆って守っているものです。
身体の表面を覆っている陽気を“衛気”と言い、外部からくる“邪”から身体を守る役割があります。
黄帝内経でみる陽気
黄帝内経によると陽気は自然界・人体において非常に重要なものであり、古代中医の専門家は人体の陽気の作用を多方面にかけて重要視し、人体の陽気の役割の理解を深める研究をしてきました。
人の世では、生まれてから幼少時代の子供は陽気に偏っており、“陽気の体”だと言われています。
子供は活動的で、常に様々な遊びを見つけるし、大人より落ち着きがないですよね。
若くて幼稚な子供時代は“陽気の塊”と中国の中医師で表現してる方もいました。
そして、青年期には陽気が最も旺盛になる身体となります。
40歳になると陽気と陰気が半々になり、40代を境に陽気は徐々に衰えていく方向に転換されます。
晩年となると陽気は徐々に減っていき、寿命が近づく頃には“純陰の体”に属すと言われ身体の中の陽気が無くなり陰気が占めている状態となります。
このように、人の身体そして万物の成長と衰退は陽気の盛・衰の段階に依存し、決められています。
種子に例えると分かりやすいのですが、成熟した種子は多くの陽気を含んでいて土に根を張って発芽する能力を持っています。
非常に生命力があり、活力がある状態です。
もし、その種子の中の陽気がダメージを受けて損傷してしまった場合、根を張る・発芽する成長する過程に支障を及ぼします。
種子の陽気が尽きてしまえば“純陰”であり、陰気が占めるものとなってただの食料・肥料と化してしまいます。
私たちは、この種子のような陽気・生命の道理を理解して身体の陽気がダメージを受けないように、消耗しないように気をつける必要性があるのです。
これは、人が陽気にダメージを与えることは自分自身の生命を傷つけるのと同じことになります。
陽気を守るためにできることは、考え事をしてエネルギーを消費しない、過労を避ける、身体を暖かくする、といった自分を守る様な生活習慣です。
病気を避けるためには陽気を守ることが大事、というのを意識して生活することが病気にならない身体を作る養生では大切な事です。
陽気が不足すると病気を発症させる原因となってしまう
陰と陽の抽象的な概念は、易経の複雑な自然現象と事象に由来しています。
黄帝内経では易経の概念から陰陽の関係について述べられていています。
中でも陽気は人体の主導する役割をしている、と解説されています。
前述の通り陽気は上に外に動く役割があり、人体の皮膚上にあって外邪の侵入から身体を守る働きがあります。
そのため、人体にある陽気のバランスが崩れてしまう、過労や無理をして陽気を消耗してしまうと身体の外表にある陽気は減少してしまいます。
身体の陽気が消耗して減ってしまうと、それに付随して陰気も徐々に消耗してしまいます。
これは陽虚・陰虚となり気虚となる現象です。
病気が発症する・しないかは陽気が十分にあるか・ないかの盛・衰が決定要因にあるとも言えるのです。
邪と闘う陽気は“正気”です。
正気不足だと邪に対抗する力が弱いこととなってしまいます。
そのため、陽気不足は病気を発症させてしまう身体の内側の根本原因でもあるのです。
この点を理解した上で養生を心掛けてみると、身体の防衛力を強化する基盤にもなると思います。
参考文献:
《图解经典》编辑部 编著 「图解 黄帝内经 中国养生第一书」