茶療

春の茶療と花茶

中医茶療の視点から春の養生に適しているお茶について紹介をしたいと思います。

春は花茶であるジャスミン茶(茉莉花茶)ローズ茶(玫瑰花茶)の2つのお茶を紹介します。

中医学では春は冬の氷が溶けて大地の陽気が上へ昇る動きに変化するため、自然界の万物の活動も活発となります。

人の身体も自然界の動きと同様、冬に腎臓で固められて貯蔵されていた陽気が上へ・外へと動き出す時期です。

前回の「春の養生」の記事で紹介しましたが、春は陽気の動きが活発となる・肝の疏泄が活発となる点から情志障害が起こりやすい時期でもあります。

また、陽気が活発になる分、身体内部の陰陽バランスが崩れてしまうと体内にが発生しやすくなってしまい、この熱が中焦の肝・胃に影響を及ぼしてまいます。

情志面・身体に生じる熱の影響をはじめ春に生じやすい不調を予防するには、活発となる陽気の動きを理解することが春の養生ではポイントとなります。

では、春に変化する身体の解説もしながら、春季に飲むのに適したお茶について紹介していきます。

ジャスミン茶 茉莉花茶

ジャスミン茶は中国では香片とも呼ばれている茶葉で緑茶の茶葉にジャスミンの花の香りをつけて加工したものです。

(ちなみに緑茶だけでなく中国茶ではウーロン茶に香りをつけたものもあります。今回はスタンダードな緑茶ベースのジャスミン茶に絞って解説をさせていただきます。)

香りが魅力的なお茶ですが、緑茶の茶葉に香りをつけたものなので分類は緑茶に該当します。

ジャスミン茶を中医学で詳しく分析しますと緑茶ベースですので、緑茶ならではの

  • 清熱解暑(身体の熱を冷ましてくれる)
  • 健脾(消化器を健康にしてくれる)
  • 安神(心を安定させてくれる)

この3つの作用を発揮してくれます。

春は前述の通り、陽気動きが下焦から活発となる時期です。

身体の中の陽気が活発になり多くなってくると、多すぎる陽気は身体の中でとなってしまいます。

そのため、気温が温かくなるにつれて身体の内側からが増えていき、身体の中の水分・津液を消耗してしまうため口乾・皮膚が乾燥する燥症状、そして胃に熱が溜まってしまう胃熱症状が出やすくなってしまいます。

このような症状を予防してくれるのがジャスミン茶です。

ジャスミン茶は清熱解暑の効能の通り、身体の中の熱を冷ましてくれる作用があります。

春には活発になる多くなる陽気の影響で胃熱が発生して胃に不快感が生じてしまうこともしばしばあります。

ジャスミン茶は胃熱に対して清熱解暑、健脾の働きをしてくれるので春に生じる胃の不快感を予防してくれます。

ちなみに胃熱は熱が発生して胃に留まっていることが原因ですが、他にも胃気の動きが阻害、もしくは気が逆に流れてしまっていることが原因です。

中医治療では胃・脾の経絡を調整する治療がなされます。

自然界でも春は陽気が徐々に発生してくる分、天候も不安定な時期です。

気温が温かくなったり、寒くなったり不安定ですよね。

吹く風がまだ冷たいですので、春は風から寒気が皮膚から身体に入りやすい時期でもあります。

ジャスミン茶は花茶ですので花茶特有の花の香、いわゆる芳香作用があります。

この芳香作用は身体に入る寒気をほどよく身体から出してくれます。

ベースが緑茶ですので、寒気を出す作用はそれほど強くないと思われますが身体の陰陽を調整する程度には働いてくれるようです。

このように、身体も自然界に起因して陰陽バランスが不安定になりがちですので、熱・寒のバランスを程よく調整して保ってくれるジャスミン茶は春に適しています。

身体の陰陽バランスが整いますと春は何かと眠くなりがちですが眠気を誘発させないようにしてくれます。

それに、ここぞという時に力を発揮したり、更に情緒の安定も保つことができます。

また、ジャスミン茶は他にも滋潤効果により肌に潤いを与えてくれるので美容にも良いと言われています。

ローズティー 玫瑰花茶

ローズティーは性味が微温性で飲むと口の中で程よい香りと酸味が広がるのが特徴です。

一般的にローズティーはビタミンが豊富で身体を温めてくれる作用があると言われています。

中医茶療でローズティーは

  • 活血調血 血流を良くしてくれる作用
  • 疏肝理気 肝の疏泄(気の流れをスムーズにする動き)を助けてくれる役割

この2点があります。

血流・気の流れをスムーズにしてくれるので、もちろん美容にも良いです。

習慣的に飲むことで肌のシミと取ってくれると言われています。

また、気血の流れをスムーズにしてくれるので疲労が蓄積されない身体にもしてくれます。

春に気分が晴れない、少し鬱気味という方は肝の疏泄に支障が生じていることが一因ととして考えられますのでローズティーを飲むことをお勧めいたします。

まとめ

春の茶療として、ジャスミン茶(茉莉花茶)、ローズ茶(玫瑰花茶)の2種類を紹介させていただきました。

養生の原則では中国語で“春飲花茶”と言われており、春は花茶を飲むことで春に生じる不調を予防することができると言われています。

花茶は性味が甘涼性である点と芳香(花の香り)による辛散作用(気を発散させる作用)が働いてくれるので、体内にある冬の寒邪を外に出すことができます。

更に、身体の中の陽気の働きを助けてくれる為、身体の陰陽バランスの調整にも役立ってくれます。

春の不調を早めに予防するためにも、今回ご紹介した花茶を飲んで身体を整えてみて下さい。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。