中医解説

邪とは何か?

東洋医学には「邪」という単語が多く使われます。

「邪」は病気の原因となるものです。

では,どのようなものが病気の原因となるのでしょうか?

それには

自分の感情や生活習慣による内因性のものと、

環境による外因性のものと分けられます。

内因性、外因性のものが身体・精神に支障をきたすと「邪」と表現されます。

「邪」の侵入経路

この「邪」が外から体内に侵入したり、体内で産生されることで生体バランスが崩れてしまいます。

体内に邪が存在することによって体調不良が起きる、病気に発展すると言われています。

外から侵入する邪は人の身体を守っている気、いわゆる衛気で守られます

衛気はスピリチュアルではオーラと表現される

しかし、衛気が弱っている、又は何らかの形で衛気に隙が生じている場合に邪は弱っている部分から侵入してきます。

要は身体表面を覆っている衛気は弱っている部分から隙が生じてしまうのです。これは衛気に穴ができてしまった状態です。ここが狙われてしまいます。

邪が侵入する経路は、

衛気の表面につく

皮膚表面に侵入する

経絡(気の通り道)に侵入する

臓腑に侵入する

といった流れです。

経絡(気の通り道)に侵入している段階が一般的に風邪症状が出て正気と邪気がぶつかり合っている状態です。

よく発熱や倦怠感は身体がウイルス、細菌と闘っている状態と表現されますね。

ここで正気が邪気を食い止められないと、邪気は身体の奥へ更に裏へと侵入して重い病となってしまうのです。

では、病気予防には防衛の気を強くしてしまえば良いのです。

しかし、そう簡単に強くはできない状態に私たちはあります。

詳しく説明していきますと、身体の防衛が弱くなってしまう原因は外因性と内因性のものがあります。

「邪」内因性の要因

内因性は精神的・感情的要因と、飲食、労倦、三毒(食毒・水毒・血毒)です。

1つ1つどのような影響を及ぼしているか見ていきましょう。

精神的・感情的要因:

悩んでいる、焦っている、落ち込んでいる、怒っているといった何か1つの感情に偏っていたり、囚われている状態だとそちらの方に労力と気を浪費することになるので衛気に弱くなり隙が生じます。

飲食:

良質なものを摂らないと飲食物から良い気を摂取できないため身体の防御にも影響が出てしまいます。風邪をひかないように正気を強くする、抵抗力をつけるの良質なものを食べる食事が大事となります。

労倦:

働きすぎて疲労している状態です。疲労困憊では正気に活力がなく気虚に近い状態です。

三毒 (食毒・水毒・血毒)

食事の添加物に含まれている食毒、西洋薬に含まれている水毒、これらが血に溶け込むのが血毒と言われています。

内因性のものは自分の心の在り方、そして生活習慣によるものが多いことが分かります。

「邪」外因性の要因

外因性は六淫と言われていて「風、寒、暑、湿、燥、火」となっています。

これは本来自然現象であり、これ自体は病因ではありません。

しかし、前述の通り身体に侵入してしまうと外邪となります。

外邪のうち、風、暑、温燥、火は陽性のもので、症状も陽性で比較的浅層に起こって回復も速く、外部に排出しやすいものである。

それに反して陰性のものとされる寒、湿、涼燥などは、しだいに深層へ進行し、停滞し、積聚などを形成して慢性経過を辿りやすい。

山下詢 著 「脈診入門 六部定位脈診法」より引用

東洋医学の治療法では身体の中にある邪は身体の外に排出する方針がとられます。

邪がどの種類かによって東洋医学での治療法は異なります。

見極めには正確な弁証論治能力が求められるのです。

まとめ

このように「邪」の要因になるものは日常生活に溢れています。

外的環境だけでなく食事や生活習慣、感情の在り方まで関わっています。

自然環境の温度や気候は私達にはどうしようもできないことです。

しかし、身体が自然現象に負けないように自然環境に適応した生活をすること・季節の養生に合った生活をすることは重要なことだと思います。

昔の先人たちは自然の中で生活する上で病にかからない生き方を知っていて「養生」を書物として後世に伝えていったのだと思っています。

また、内因性の精神・感情は大きな感情に引っ張られず一定でいることが身体を強くするコツになります。

しかし、なかなかできないものです。

感情を一定にしようとするツールは色々ありますね。

座禅、ヨガ、カウンセリングや話すことも引っかかっている問題を話すことで排出効果があります。

私は人生の壁1つ1つの問題をクリアした先に感情を一定にコントロールすできる境地が待っているのではないかと信じています。

それには努力して経験値があって、強い精神力ができてこそ、この境地にたどり着けるようで…

正にこの世は日々修行ですね。

引用・参考文献:山下詢 著 「脈診入門 六部定位脈診法」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。