中医解説

身体の陰陽を整える

私たちは自然界の日の光や空気、水、栄養物質を摂取して生きています。

人は自然界の気の交流がない状態では生命を維持することはできません。

身体に流れる気も外の自然界の気の交流をして人体に巡っています。

人間も自然界の原則から産まれた生物の1つです。

そのため中医養生では、健康で天寿を全うするには自然界の気の変化、つまり陰陽の変化に精通する生き方をすることが大事だとされています。

今回は自然界・人体の陰陽の気の動きから健康な身体を作る養生のポイントについて解説をしていきます。

大自然は陰陽の気の原則で動いている

この世は陰陽の相互関係で成り立っています。

これは陰陽の対立と言われ、陰陽二つの側面は互いに制約しながら闘争する基本的な流れがあります。

季節・天気・一日の変化は大自然の陰陽原則に基づいて、陰陽の気が互いに制約しながら動いていることで生じます。

春夏秋冬の四季の温度差・気候の変化、昼・夜の変化は気の運動の変化なのです。

陰陽対立のバランスの良い状態を「陰平陽秘」といい陰陽の正常な働きを表します。

この原則に基づいた上で生じる四季の気候の変化、一日の変化は常に動いている陰陽の気のバランスを平衡に維持する動き、とも言えるのです。

気の動きは太陽の月の動きでもあり、宇宙の働きも関わっている壮大なものです。

前述の通り、私たちは自然界の食料・水、そして気・精を受けて生命を維持しています。

そのため人体の陰陽の気と自然界の陰陽の気は常に交流していることから、密接な関係にあることがお分かりいただけるかと思います。

病気にならない身体を作る中医養生の考え方では、人体の陰陽バランスを整えた上で自然界の陰陽の気と精通することがポイントなのです。

一日の人体の陽気の変化

ここで、人体の1日の陽気の動きについて見ていきたいと思います。

陽気は邪から身体を守る気で人の身体の周囲を守っている気です。

陽気は日のあるうちは、人体外部において、体外からの邪気に対し、防衛体制を整えている。

夜明けになると、陽気である衛気が身体の体表を巡り始める。

日が高いうちは、天の陽気と相まって、人の陽気も盛大であるから、防衛力も強い。

日が西に傾くと、天の陽気は段々と衰えてくる。それにつれて、人の陽気も減少してきて、日が落ちると毛穴が閉じて内部に入ってしまう。

日暮れになったならば行動をやめて、外邪を防がねばならない。肉体労働を続けて筋骨を過労させてはいけない。

黄帝内経 「素問」 より引用

人体の陽気がいかに一日の自然界の気の変化の影響を受けているか、理解できるかと思います。

陽気は活発で温かい性質なので、昼間の太陽の出る時間帯・太陽の位置に相応して身体を守る力が強くなる、ということが分かります。

そして陽気は日暮れと共に身体の内側に収められるのです。

夜は陰の時間帯でこの間に陽気は身体の内側で修復作業を行います。

このように、人体の陽気は自然界の一日の陽気の変化に沿った動きをします。

そのため、人も自然界の陰陽の気の動きに相応した生活をすると良いとされています。

シンプルですが日の出とともに起きて活動をして、夜には休むのが自然の流れに沿った習慣です。

自然界の陰陽の流れと反対の生活をした場合

もし、この自然界の陰陽の原則に反した生き方をした場合どのようになるのか?

「素問」にはこのように書かれています。

朝・昼・夜の陽気の消長に反した生活をしていると、身体はだんだんとむしばまれてゆく。

黄帝内経 「素問」 より引用

意味としては自然界の陰陽の流れと反対の生活をしていると陰・陽気を消耗する生活となってしまい、邪が身体を蝕んでしまう、ということです。

夜更かし、長時間の肉体労働、遅くまでの残業等が当てはまるかと思います。

自然界と同様、人体の生命活動の正常な状態は「陰平陽秘」です。

陰平陽秘

身体の陰陽の気が平衡であることは生命活動の基本であり、健康な状態です。

しかし、陰陽バランスが失調していると身体は病気になりやすい、衰えやすい、天寿を全うしないまま亡くなることにも繋がってしまいます。

まとめ

生活習慣を自然界の陰陽変化に適応したものであれば私達の身体は健康を保つことが出来ます。

このような生き方は、身体の気を整える近道です。

四季の養生原則では春夏は陽気を養う、秋冬は陰気を養う、これが人体の陰陽を平衡にして維持する養生原則です。

特に気虚体質の方は大自然の陰陽の変化に適応した生活習慣を作ってみて下さい。

徐々にではありますが、身体と心に良い変化をもたらしてくれるはずです。

しかし、現代人は仕事や家庭でストレスを抱えている方が多いので生活習慣が乱れてしまっています。

仕事で激務の方に「余裕を持って、自然の流れに沿った生活をして下さい」なんて言うと「は?」と怒りを買ってしまうこともしばしばです。(とほほ…)

仕事の流れで無理をしなければならない方が多いので、自分で自分の身体をケアできない方も多いことと思います。

ただ、ここで私が言いたいのは自分の身体のケアは非常に大事だということです。

何度も言いますが、陰陽バランスが平衡な状態「陰平陽秘」は生命活動の基本で、邪が入ってこない身体・精神の状態です。

要は頭・心の中がゴチャゴチャしない状態、邪魔をする余計なものが入らない、今の自分の最大のパフォーマンスを発揮できる状態、直感に優れた状態です。

バリバリ働くビジネスマンには理想の状態ではないでしょうか?

この「陰平陽秘」を作り出せるのは、体質を細かく分析して治療にあたる東洋医学のジャンルが得意とします。

よく、ちょっとした不調でも相談しにいって良いのでしょうか?と聞かれますが、そのちょっとした不調の内に治すことが大事なのです。

中医学では「未病」と言って病気を発生させないことが大事ですので遠慮なくかかって良いと思います。

忙しくて自分をケアできない、という方こそ、東洋医学・中医学の漢方、鍼灸等をお試し下さい。

もちろん私の方でも経絡推拿で陰陽バランスを整えることを得意としていますので、機会があればお越し下さい。

心も体もスッキリした状態を作り出して見せます。

陰陽の気に関する養生については「四季の養生」「子午流注法」「茶療」の記事でも書かせていただいています。

中医学の視点で解説をしています。日々の健康づくりに参考にしていただければと思います。

四季の養生|宏福中医研究会 (koufuku-chui.com)

茶療|宏福中医研究会 (koufuku-chui.com)

子午流注法|宏福中医研究会 (koufuku-chui.com)

参考文献 韓晶岩 著 「新中医基礎理論」

引用文献 小曽戸丈夫 著 「素問」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。