中医解説

花粉症予防の養生

冬が終わって暖かくなってくると、春の到来を楽しみたい時期となります。

しかし、この時期は花粉症に悩まされている方も多いかと思います。

私も花粉症に悩まされている一人で、中医学を使って何とか解決をできないかと日々奮闘している所です。

以前、中国で中医修行中に師である李老中医師に花粉症の中医治療について質問をしてみたことがあります。

「原因の花粉を身体に入れないことが大事だが、体質を見極めないと“コレ”という治療は言えない」

と返答をもらい、花粉症に関しては各々の体質を見極める弁証論治が非常に重要なのだな、と感じたことがあります。

花粉症は呼吸系統にも影響を及ぼすもので鼻水・眼・皮膚が痒くなる、眼から涙が出る、といったアレルギー症状が典型的です。

これは花粉が呼吸を通して粘膜から体内に侵入することで引き起こされるものです。

空気中にある抗原体である花粉を吸い込んで粘膜に付着することが原因です。

花粉症は症状が様々で軽い人もいれば発症しない方もいます。

中医では花粉症の発症には正気が関わっていると言われています。

正気が強い人は発症しないため、花粉症で困っている人は衛気で防衛力を高めることで予防をすることができます。

それには体質を見極めることが非常に重要ですが、今回は花粉症予防の“養生”というテーマで私の解説できる範囲の情報ですが書かせていただきたいと思います。

中医学で見る花粉症

花粉は春に外を歩いていると空気中に漂っているものです。

その花粉を呼吸を通して口・鼻の粘膜、眼の粘膜に付着することでアレルギー反応が生じます。

花粉症の人にとって、抗原である花粉は外因性の“邪”ということになります。

では、花粉症になる人・ならない人がいます。

発症に関して中医学では正気(身体を防衛する陽気)・(身体に影響を与える花粉)が関与しています。

正気は免疫力でもあり、この免疫力が発症に関わります。

正気が強い人は花粉にあたってもアレルギー反応は起こらない。

正気の弱い人は普段でも風邪を引き易いし、花粉に当たった時にアレルギー反応が起こり易い。

韓晶岩、袁世華 著「中医内科学 (上)」より引用

と、中医内科学の教科書には書かれてあります。

では、花粉という邪気を体内に入れないように予防をした上で正気を強化して免疫力・身体の防衛力を上げることが花粉症予防には必要となってきます。

身体の防衛を強化する花粉症予防の養生でカギとなって来るのは、まず春の気候の特徴を理解することが大事です。

春は気温が暖かくなったり・寒くなったりと気温が不安定で、外の気候の影響を受けて人の身体も不安定となりがちです。

では、春の気候も踏まえて次の章で詳しく解説をしていきます。

身体の寒・熱のバランス

花粉症の鼻水・眼・皮膚が痒くなる、眼から涙が出る、といったアレルギー症状の証は風熱・風寒による影響が挙げられます。

  • 風寒:鼻汁多い、咽喉が痒い、舌苔白くて薄い
  • 風熱:眼が紅くなる、鼻水が濃い、舌が赤い、黄苔

実際には風寒・風熱どちらの症状も混ざり合って症状として出てている方もいます。

花粉症は風寒邪による原因が多いとされています。

では、何故風寒邪の影響を多く受けているのでしょうか?

それには冬・春の身体の陽気の流れを見ていく必要性があります。

閉蔵の季節であり冬の寒さで陽気が消耗しないように、身体の陽気は腎臓に蓄えられて固まっています。

は冬に腎臓に固められて蓄えていた陽気が溶けだして陽気の動きが活発となり、春の外の陽気をどんどん身体に入れるよう変化します。

        ↓冬と春に関する詳しい養生解説の記事はこちらをどうぞ↓

春は外界の陽気に反応して身体の中の陽気は活発に動いていることがポイントです。

この活発な陽気は身体の内側から冬に受けた風邪・寒邪を身体の外に出そうと働きかけます。

しかし、春は気温がどんどん暖かくなって自然界の陽気は発生していきますが、気温は不安定なものです。

暖かくなったり、寒くなったり、風が強かったりします。

人の身体は自然界の気候の影響を大きく受けます。

そのため、花粉症にお困りの方の身体の弁証をしてみると、

  • 身体の内側に熱があり、表は寒といった証
  • 上焦は寒が強く虚証、中焦は熱が停留した実証

といった寒と熱のバランスが極端で不安定な方が多くみられます。

身体の陽気は寒邪を身体の外に追い出そうと活発に働いていますが、外の寒い風に当たるなどして表層に寒が付着し熱気と寒気が表層と裏層でぶつかっている方もいます。

この熱と寒の極端なアンバランスが身体の陰陽失調を引き起こし、免疫力が下がって衛気で身体を防衛できない状態となってしまっているのではないかと思います。

そのため、私の経絡治療では先ず寒・熱のアンバランスを解決するため気機の流れを良くして先ず身体の気・血・水の流れを調整する所から始めています。

そこから熱・寒邪がどこにあるか見極めた上で祛邪、そして足りない部分は補気していくのを方針としています。

花粉症の予防

花粉は呼吸を通して鼻・口、そして眼の粘膜から身体に侵入してくるものです。

この花粉という“邪”を身体に取り込まない為にマスク・眼鏡をかけて予防することはもちろん必要です。

しかし、ここで忘れてはいけないのが身体を守る防衛力である陽気いわゆる衛気の強化です。

衛気は身体を取り巻いて外邪の侵入から身体を守っているだけでなく体温調整、津液コントロールまで働いています。

つまり、衛気の強い人は花粉が飛んでいても花粉症を発症しずらくなるのです。

衛気は身体の陽気です。

では花粉症の養生で必要な事は身体の陽気を損なわない為に、

  • 冷たい物を食べない・飲まない
  • 身体を冷やさない
  • 睡眠を十分にとる
  • 旬の野菜を食べてバランスの良い食事を摂る
  • 規則正しく生活する

といった習慣が大事となります。

特に身体を冷やさないことは非常に大事な習慣です。

花粉症症状が出ている方は春の不安定な気温のため、腕の皮膚表面に寒邪が居座っている方が多いです。

薄着で春の冷たい風に当たって、そのままにしている方が多い為、腕の肺経・大腸経の皮膚上の経絡部にが停滞して気血の流れが悪い方が見受けられます。

肺経・大腸経ともに腕の撓側を通ります。

肺・大腸経が冷えてしまうと肺の機能に影響を及ぼしてしまう為、花粉症の症状がひどくなってしまいます。

症状をひどくしない為にも腕を冷やさないように厚着をする、冷えたら温めることを意識してください。

身体の消化器系は冷たい物を飲む・食べる習慣をつけてしまうと寒気を体内に取り入れやすくなってしまいます。

胃のある中焦から冷えて、食道・気管を通して肺に寒気の影響も及ぼしてしまいます。

また、過労・ストレスは陽気を損なってしまいますし、気機の動きに支障をきたします。

身体の防衛力の強化にはストレス管理も重要となってくるのです。

このように、花粉症の養生には不安定な春の気候を理解した上で身体を養生することが大事です。

花粉が粘膜に付着しないように対策をすることも大事ですが、生活習慣を整える、身体を冷やさない・冷たい物を口に入れない養生習慣もつけていって身体を防衛する対策をしていって下さい。

引用・参考文献:

韓晶岩、袁世華 著「中医内科学 (上)」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。