茶療

濃いお茶を大量に飲むと良くない

当ブログでは、養生習慣のため“茶療”のジャンルで様々なお茶を紹介させていただいています。

日本・中国はお茶を飲む文化が根付いていおり、お茶を健康習慣として飲まれている方も多いと思います。

今回のお話は、お茶は人の健康にとって万能な飲み物、と思っている方も多いと思いますが、それとは反対の視点で、こういった場合にお茶を飲むのは良くない、という習慣について書いていきたいと思います。

基本、適量飲むと良いとされているお茶ですが、濃いお茶を一度に大量に飲む行為は非常に身体に負担がかかります。

日本ではあまり聞かない健康法ではありますが、中国に住んでいた頃「お酒を飲んだ後に濃いお茶を飲むと二日酔いにならない」という話を聞いたことがあります。

しかし、中医学ではこのような習慣は誤っていて、逆に身体に負担をかける行為だ、と最近の研究では証明されたようです。

今回は、お酒を飲んだ後に濃いお茶を飲むとどうして身体に良くないのか?という点から濃いお茶を大量に飲むことでもたらされる影響について書いていきたいと思います。

また、お茶についての分析は一般的な緑茶を例に書かせていただいています。

お茶は利尿作用があるけど…

お茶は多くの中国人にも愛されている文化であり、私が滞在していた中国広州市は健康のために中国茶を常飲する生活習慣が根付いている地域でした。

お茶の成分には利尿作用があり、濃度が濃いお茶ほど利尿成分であるアルカリ物質が多く含まれています。

この“お茶は利尿作用がある”という背景の為か、中国でよく言われていた生活習慣があります。

それは「お酒を飲んだ後に利尿作用のある濃いお茶を飲むとお酒の燥熱が分解される」という内容でした。

確かに、濃いお茶は解毒作用もありお酒の燥熱に効果をもたらすと思われがちなのですが、最近の中医学の研究ではお酒を飲んだあとすぐは解毒効果が発揮できないことが分かってきたようです。

次の章で詳しく分析して説明をしていきます。

飲酒後に濃いお茶を飲んだ時の影響

先ずはお酒について分析をしてみます。

お酒は性味が辛・甘に属しており、陰陽属性はです。

飲むと肝経・肺経の2経に入り、この2つの経絡が活発となります。

飲酒後は陽気は上昇し、肺気は増強します。

対してお茶(一般的な緑茶)は性味が、属性はであり、気を降ろす主降作用があります。

こう対比してみると、お酒は陽属性お茶は陰属性で正反対の性質です。

飲酒後、お茶を飲めば陰陽バランスが整って中和されるのでは?と思ってしまいます。

しかし中医学では、飲酒をしたあとすぐに濃いお茶を飲むことは腎臓に対して良くない影響を及ぼすと言われています。

前述の通りお茶には利尿作用があり、濃いお茶ほど利尿に作用するアルカリ物質が多く含まれます。

このアルカリ物質は未分解の毒を腎臓に入れてしまう、と中医界では警笛を鳴らされています。

お酒を飲むことは燥熱が身体の中で多くなることであり、多くなった燥熱は“熱毒”となって身体に蓄積されます。

この毒は濃いお茶を飲むことによってお茶の主降作用、気を降ろす作用が働いてしまい腎臓に入ってしまいます。

このような過程で腎臓に“熱毒”が侵入するわけですから、腎臓の腎陰は“熱毒”による損害・ダメージを受けてしまいます。

具体的には

  • 気滞を造り出してしまう
  • 尿の頻度が多くなり、濁ったものが多く出てしまう
  • 大便が乾燥して便秘となってしまう

といった腎陰が損傷を受けた症状が出てしまいます。

そのため、飲酒後は濃いお茶を多く飲むことは避けた方が良いのです。

お茶を飲むよりも良い方法は、飲酒後はお酒の燥熱が身体に多くなっている状態ですので燥熱から滋陰に変えてくれる、果物や果物のジュースがお酒の酔いさましのために勧められています。

お茶に含まれるカフェインが及ぼす影響

このようにお酒で酔っている人にはお茶を飲むこと自体が合わない、とも中医養生では言われています。

もう1つ掘りこんだ分析をさせていただくと、

お茶葉は多くの成分が含まれており、中でも主成分であるカフェインは興奮作用があることでも知られています。

よく寝る前はお茶を大量に飲むのは止めるように言われるのは、カフェインが脳の覚醒を促してしまう為です。

カフェインは大脳神経の興奮を促進し、心臓にも興奮を与えてしまいます。

特に茶葉がたくさん入った濃いお茶はカフェインを多く含むこととなります。

濃いお茶を大量に飲んでしまうと、お茶のアルカリ性物質・カフェインを身体に大量に入れてしまうこととなり、これは胃液の正常な分泌にも悪い影響を及ぼしてしまうのです

胃液の分泌がお茶の成分により妨げられてしまうと、食べ物の消化も悪くなってしまいます。

お茶に酔うこともある!?

お茶と言うのは量も濃さも適度に飲むのが良いとされています。

しかし、一度に大量に濃いお茶を飲むことは前述の通り身体に負担となってしまいます。

皆さんは“お茶に酔う”という状態があることはご存じでしょうか?

ちょっとこの“お茶に酔う”ことについて書かせていただきます。

例えば、

普段小食で体型が脂肪が少なめの人が大量の濃いお茶を飲んで気分が悪くなってしまうのは、お茶に酔った状態です。

また、普段お茶を飲む習慣がない人で、空腹時に大量の濃いお茶を飲んでしまい、眩暈などが引き起こされるのもお茶に酔った状態です。

お茶に酔ってしまう、とはあまり聞かない言葉ですが、お茶に酔うと心慌(焦燥感)、眩暈、脱力といった症状が出ます。

ちなみに私も以前お茶に酔ってしまった思い出があります。

学生時代、テスト勉強が間に合わなかったので、夜にカフェインを身体に入れるためお茶を大量に飲んで夜中も勉強しようと試みたことがあります。

見事にお茶に酔ってしまい、気分が悪くて頭がはっきりしない状態の中勉強をした記憶があります。

上記の通り、お茶は一度に大量に飲むことは身体にとって負担となってしまいます。

お茶は適度に適量を飲むのが養生では大事なのです。

もし、お茶に酔ってしまった場合は焦らずに先ず心の緊張をとって下さい。

それから、何か口に入れて下さい。

特にご飯や果物、甘いお菓子など甘味のものを摂ってください。

甘味のものを食べることで身体の中心である脾臓から気機を調節し、お茶に酔ってしまった症状を緩和していってくれます。

参考文献:

慈艳丽 编著 「九种体质养生全书」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。