四季の養生

梅雨の湿気に負けない身体を作る

梅雨時期は中医学では“長夏”と季節は表現され、陰陽五行の“土”に属する季節です。

この時期は何といっても、どんよりとした天気で雨・湿気が1年で最も多い時期となります。

湿気と言うのは非常に厄介で、身体の中に湿気が溜まってしまうと身体が重く感じる・倦怠感だけでなく下肢浮腫・頭痛を引き起こしてしまい、時には腹痛や下痢といった症状をきたしてしまいます。

湿邪によって身体の気が滞ってしまい、気持ちも重くなってしまいがちです。

今回は、梅雨時期に湿気の影響を受けるのは避けられませんが、湿気に対しどのように対策・養生をしたら湿気に負けない身体を作れるのか書いていきたいと思います。

養生では「いかにして身体に入った湿気を出すか」がテーマとなります。

寒を受けないように衣服を調整して汗をかく

梅雨時期の雨の日の気温は比較的低くて肌寒さを感じる日もあれば、暑くてムシムシする日もあり不安定です。

一般的には気温が徐々に上がってきて蒸し暑いのが梅雨時期の特徴のようです。

この時期に服装で注意したいのが、薄着をして寒に当たらないことです。

「冷えは万病の元」と言われている通り、半袖の服などで皮膚を露出してしまうと露出した部分から皮膚が冷えてきてしまいます。

その冷えた部分から気の滞りが生じてしまい血流にも影響が出てしまいます。

特に湿気は他の六淫の気もくっつけて身体に侵入することが多い為、湿邪寒邪が同時に身体の中に入って停滞してしまうと非常に厄介です。

この時期の養生で大事なのは“身体に溜まった湿気を出す”ことなので、寒に当たって皮膚から身体が冷えては代謝も悪くなって湿気を外に出すことができません。

では、どのような服装が適するかと言うと身体が冷えない程度の温かい服を着ることです。

身体が冷えない程度の温かい服を着る理由は

  • 身体を冷やす寒から守ることができる
  • 汗をかくことができる

という2点です。

実は、この時期に汗をかくことは非常に大事なのです。

普段私たちの身体は身体を動かすことで汗をかいて、汗によって身体の中の老廃物を排出する働きがあります。

湿気が多い時期というのは、空気中の湿気を浴びてしまっているので汗をかかないと身体の老廃物が溜まってしまい、身体の中の水が“濁”の状態になってしまいます。

そのため、汗をかいて老廃物を体表に排出することが大事となります。

身体が冷えないような服装をして汗をかきやすい状態にしておくと、発汗した時に身体がスッキリするような爽快な気分になります。

そのため、衣服は身体を冷やさないためだけでなく、少し汗をかけるような程度の長袖のものを着ることをお勧めします。

程よく運動をして汗をかく

先ほど説明した衣服にも通じることですが、運動をして汗をかくことも身体の余分な湿気・老廃物を出す上で大事な習慣となります。

運動で注意していただきたいのは、汗をかきすぎないことです。

汗をかきすぎてしまうと身体に必要な水分そしてエネルギーである“気”が体表から多く出てしまう為、疲労を誘発しやすくなってしまいます。

大事なのは余分な湿気・老廃物を汗を通して体表に出すことです。

余分なものを適度に排出する汗のかき方は、皮膚が汗でじわっと湿る程度にかくことです。

この、じわっとかく汗と言うのは内臓の余分な水分が皮膚上に出たもので身体にとって余分な老廃物・水分が含まれています。

この程度の汗のかき方でいいの?と思いますが、中国の中医師たちからすれば「十分」と教えられてきました。

確かに、皮膚が湿る程度の汗は程よく代謝が良くなり、スッキリとした気持ちが味わえて疲労も感じません。

やはり、梅雨時期も適度な運動は身体の平衡を整えるためにも大事な習慣です。

湿気に負けない心構え・生活習慣

最後に梅雨時期の生活習慣についてです。

降水量も多く、空気中の湿気が多い時期ですので疲れや倦怠感を感じている方もいるかと思います。

梅雨の重い空気に流されると倦怠感を感じてしまう為、気持ちの養生では重い気分とは反対の軽い気分に切り替えるのがお勧めです。

軽い気分とは、リラックスをして楽しい状態を作ることが大事となります。

リラックスそして楽しい、という気持ちは気の流れをスムーズにしてくれるからです。

また、睡眠時間を充分にとった上で早起きをして朝の自然界の清気を吸い込むこと、太陽が出た日はしっかりと太陽の光を浴びることが身体の中の陽気を充満させて気血の流れを良くする上で必要な習慣となります。

気持ちや生活習慣に関しては養生の基本的な所を述べさせていただきましたが、このような心がけをしていくことで、湿気による疲労は防ぐことが出来ます。

今回は、梅雨時期の養生として、

  • 寒を受けないこと
  • 衣服の工夫・運動で汗をかくこと
  • 気持ちをリラックスさせて外の清気・太陽の光を身体に入れること

を紹介させていただきました。

どれもちょっとした習慣ですので、湿気モリモリの重い気に負けないように養生の基本から湿気・老廃物を出すことを習慣に強い身体・心を作っていって下さい。

参考文献:

常学辉 编著 「《黄帝内経》全解」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。