四季の養生

春季の養生

春は一年のうち最初に訪れる季節と言われています。

春の訪れは暦上では2月の立春です。

立春の時期はまだまだ寒い段階ですが自然界の陽気が徐々に発生してくる時であり、この立春から一年のスタートは開始されるのです。

春が1年で最初の節気である由来は、四季の中で春は万物の活動が開始する時期で大地の氷が溶け、自然界では大地から陽気が上がってきて万物が活力をつけて喜ぶ時期だからです。

人の身体も自然界に相応して大地の陽気の影響を受けています。

冬には腎に蓄えられて固まっていた陽気が春の訪れを感知して、上へ外へ活発に動き始めます。

気の流れが活発になる時期ですので、運動には適した時期です。

しかし、気温が不安定であり、人の情志が不安定になりやすい時期でもあり、この時期を快適に過ごすためには養生のコツがあります。

今回は春の気の流れにスポットを当て、養生について紹介をしていきます。

春は身体の陽気を守ること

この自然界・人体の陽気の動きから春の養生は気が上に上がっていく特性を理解した上で身体の中の陽気を守っていくのがカギとなります。

身体の中の陽気が気温が温かくなるにつれて徐々に満ちるようにすることが大事なのです。

そのため、陽気にダメージを与える・陽気を消耗させることは避けるのが原則です。

しかし、春の気温は寒くなったり、風邪が強かったり、と思ったら温かくなったりと不安定ですよね。

春は冬とは異なり身体が外の陽気を身体に取り入れようとするため腠理(そうり)が開いてくるようになります。

腠理とは、西洋医学では汗腺のことで東洋医学では皮膚上で気が出入りする所です。

腠理が開くことで陽気を取り入れる反面、寒い気温・風に当たった場合にも身体に入りやすくなってしまうのです。

そのため、春も身体を冷やさないように防寒は必須です。

また、人体の気の流れも冬と比べるとスムーズとなるため、締め付けの少ない服を着ると気血の循環を良くすることに繋がります。

春は五行では木。情志面に注意を。

春は陰陽五行で見ていくとに属します。

は五臓六腑はが該当します。

疏泄という気の流れスムーズにする機能があり、肝の機能が春に活発になることで気の流れがスムーズとなります。

しかし、春は温かくなるにつれて人の身体も大地と同様、下から陽気が上に上がってきます。

ここで五行、の特性として上に上に伸びる働きも疏泄とともに出て来るのですが、この上に上がる動きは情志面で非常にやっかいな影響を及ぼします。

春には情志障害が起こりやすい、とは聞いたことはあるでしょうか?

怒りやすくなる、抑鬱になる、この2点が挙げられます。

怒りやすくなってしまうのは、は五志が“怒”に属するため肝の気が活発になるので自然なことなのです。

しかし、だからと言って怒りを調整できないのは自分にも人にも悪い影響をきたします。

怒りをコントロールするため冷静に自分を見つめ、心の調整が大事となってきます。

中医養生では怒りやすい気質の人は酸っぱいものを食べるのを春に控えるように言われています。

酸味に入る五味であり、酸っぱい物を食べ過ぎてしまうと肝の気を更に活発にしてしまうため怒りやすくなってしまうのです。

ちなみに自分で抑制が効かずに怒ってしまうと身体への負担は甚大となります。

精気(エネルギー)は消耗され、臓器は老化し、怒った代償として疲労困憊となります。病気にも繋がってしまいます。

では、抑鬱になる方はどうなっているのでしょうか?

肝の気が活発になるにも関わらず、肝の気が鬱結することで抑鬱といった症状が現れてしまいます。

抑鬱になっている方は、軽い状態ですと酸っぱいものを食べることで肝の気の発散を助けることができます。

しかし、酸っぱいものの取り過ぎは注意ですし、肝気鬱結の解決が第一ですので身体の気の通りを良くする鍼灸・整体・漢方薬など東洋医学治療をお勧めいたします。

では、このように情志面で易怒・抑鬱など厄介な影響が出てしまう春ですが、養生の感情コントロールで大事にしてほしい点があります。

それは物事を楽観的に見る。心を平和に、楽しく過ごすようにする。人と心を開くように交流をすることです。

このような心持・行動をすることによって肝の疏泄が気血の流れに良いように働いてくれます。

春の食養生

春は前述の通り陽気が発生する時期で気の疏泄が活発となるので、それに合わせた食養生もお勧めいたします。

情志面で述べた通り、酸っぱい物の取り過ぎは肝の気を更に旺盛にしてしまうため控えて下さい。

では、気の流れが上に上がって肝の疏泄も活発になる時期にどのように気機を調整すれば良いか?

それは気機の中枢である脾・胃の動きを引き出すことです。

脾・胃は五味ではが属し、甘いものを摂ることによって気機の調整も行ってくれます。

もちろん摂り過ぎは良くありませんが、身体の陽気が上に上がり過ぎて頭痛などをきたしてしまっている方は甘いものを摂って調整することを養生として勧めています。

また、明の時代の名医であり本草学者の李時珍は春はネギ・ニラ・ニンニクといった野菜を摂ると身体の陽気を養う春に食べるのに良い食材、とも言っています。

李時珍

甘いものと合わせて食べると春に自分の身体を調整する養生となってくれそうです。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。