中国での体験

感情のコントロールの難しさ

中国で李中医師についていた頃、このようなことを教えられました。

「感情を一定にして患者と接するように」

李医師はいつも感情が一定のおじいちゃんで、一緒に過ごしていると自分のペースを崩さない人でした。

診察の傍らで理不尽な態度や馬鹿にするような態度をする患者が来ても呼吸を乱すことも声を荒げることもなく接していました。

トラブルがあってもスタッフに感情を当たることはないし、診療所トップの李医師が穏やかなので職場スタッフ全員が自分のパフォーマンスを存分に発揮していてとても良い職場でした。

今思うと、李医師は感情を一定にコントロールすることを長年トレーニングしてきたのだと思います。

それは並々ならぬ努力だし一生かけて誰でもできるものではありません。

私はこの李医師の言葉を心に留めながら、このような姿を中医に携わる者として目標としています。

感情の制御ができない人の末路

病院勤務で入院患者のリハビリをしていた頃、感情のコントロールが効かない患者さんを何人か担当してきました。

中でも担当して印象的だったのは怒ると医療スタッフに暴言を吐いたり、ひどい時は暴力を振るう高齢男性でした。

なんでも家族にDVをしていた様で女性スタッフに対する対応が酷かったです。

私が20代の時にリハビリ担当でしたが、まぁ気に入らないといきなり怒鳴りだすわ、叩いてくるわで…。

こういう方は感情を無にして接しないと相手のペースに巻き込まれてしまうので20代ながら毎日精神鍛錬をさせていただきました。

しかし、その患者さんは入院が長くなると感情のまま怒ることにエネルギーを使いすぎて消耗してしまい、怒る元気が無くなってしまいました。

そしたら家族は見捨てるわ、医療スタッフも対応も最低限となって…結局身体の容体が悪化して転院してしまいました。

この方から学んだことは自分の感情をコントロールができないまま周りに感情を当たったりしていると、結局自分の精神・身体を壊して、終いにはお世話をしてくれる身近な人が去っていく、ということでした。

平常心の教えは仏教

極端な例となってしまいましたが、私達には喜怒哀楽の感情があります。

この感情はコントロールができないと自分も周りの人も不幸になってしまうのです。

しかし、何か自分にとって嫌な出来事があった時、理性で抑えられない感情がふつふつと湧いてくる時があります。

頭では「こんなマイナスな感情湧いてきても良くないことばかりだ」と思っていても感情が理性よりも勝ってどんどん溢れてくる時があります。

そういう時はイライラしたり、注意散漫になったり、睡眠にも影響が出たり体調にも支障をきたしてしまいます。

前回の記事でも書きましたが、感情に囚われてしまうと病気の元を作ってしまう原因にもなってしまいます。

では、心を平常心にするにはどうすれば良いか?

その教えは仏教で詳しく語られています。

私自身、中国に渡ってから色々あって自分の感情に潰されそうな時がありました。

その時にマインドフルネスという考えに出会い、座禅を教えてくれる和尚さんに説法で心の乱れを正してもらいました。

しかし、大事なのは日ごろの鍛錬だと。

「自分の感情が抑えられない時は1人でその感情に耐えなさい。」

こんな言葉をかけられ、今日も自分と向き合う日々です。

一人で耐えられないほどの強い感情に向き合っている方もいるかと思います。

しかし、自分の中の強い感情に呑まれるということは自分自身を蝕み、周りの人に迷惑をかけてしまいます。

自分の感情をコントロールしようと頑張っている方は「未病」すなわち自分が悪い方向にいかないように、病気にならないよう努力している方です。

家族や職場が平穏であれば病む人は生まれません。

このような努力の積み重ねで平穏、平和、健康というものが作られているのかもしれません。

私も治療者としては未熟者の一人ですが自分の感情と上手く付き合って、李医師のような幸福をもたらす人になりたいものです。

大愚和尚の「乱れた感情の整え方」の動画は仏教で感情との向き合い方を語ってくれています。

自分の感情に囚われて困っている方は必見です。ご紹介させていただきます。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。