中医解説

心臓は“君主の官”と言われる由縁

黄帝内経では、心臓は“君主の官”と言われています。

君主と言うと「王様」という意味で五臓六腑の“主”であります。

心臓は五臓の中でも1つしか存在していない唯一の存在です。

他の五臓を見てみますと肺・腎臓は左右に2つあり、肝臓も右葉・左葉と2つで成り立っています。

また、脾臓も胃と連携し合って働いています。

しかし、心臓の役割のものは五臓の中でも1つしかなく、昼夜常に拍動して動続けています

心臓の拍動は全身への血液循環に昼夜働いており、生命活動を維持するのに必要不可欠なものです。

この心臓の働きが止まってしまうと生命活動は停止してしまいます。

それ故に、心臓は五臓の中でも“君主の官”と言われ、養生をして大切にしなければならない臓器なのです。

今回は唯一無二の臓器である心臓が“君主の官”と言われている由縁を解説していきたいと思います。

心臓が“君主の官”と言われている訳

心臓は“君主”に例えられるほど五臓六腑の中で重要な臓器になります。

心臓が“君主の官”と言われる“君主”とは国家の元首であり、国の最高統治者という意味があります。

人々の上に立って中心となって指導したり、全体をとりまとめる国民の主宰者にあたります。

この主宰者の役割が五臓六腑で心臓の役割となるのです。

では、“君主”に該当するの役割を3つ紹介していきます。

1,心臓は人の精神活動を主宰する

現代医学では人の精神活動、意志、思惟というものは大脳によるものと言われていますが中医学では心臓の働きによるもの、とされています。

これについては別の記事で心臓に蔵されている“神”の役割、精神活動を主宰する点について書きましたので参考にしていただければと思います。

中医学では人の精神、意志、思惟活動は五臓六腑の生理活動が反映されたもの、という整体観念となっています。

この五臓六腑から発生された信号を心臓の“神”は五臓の意思・思惟活動が脳に反映されるのを主宰する働きをしている、と黄帝内経では解説されています。

そのため、心臓の“神”の働きが正常であると精神は健康で自分の意思・考えもはっきりしています。

しかし、心臓の“神”の働きが異常になってしまうとちょっとしたことで激しく動揺をしたり、健忘、失眠といった精神が乱れた状態を作りやすくなってしまいます。

2,心臓は人体の生命活動を主宰する

心臓には“君主”のもう1つ重要な役割があります。

心臓は各臓器を協調する役割があり、五臓六腑の調整をする非常に重要な役割があります。

これはとても複雑な生理活動であり、この働きがあることにより生命活動が正常に維持にされています。

そのため、心臓に病気が発症した場合、他の臓器の生理活動は錯乱してしまう為、病気が発生しやすくなってしまいます。

このように心臓は蔵されている“神”の働き、そして各臓器を調整する働きにより、生命活動を正常に維持しています。

身体にとって、非常に重要な役割ですよね。

故に心臓は“君主の官”と呼ばれているのです。

また、もう1点“君主”に値する働きがあります。

次の章で解説をしていきます。

3,心臓は血脈を主る

心臓は血液・血管の両方を包括しており、血脈を主る重要な役割があります。

血液が運行する血管を中医学では血脈と呼び、気血が流れる通り道ということで“血の腑”とも呼ばれています。

心臓は血脈の血液循環の動力器官でもあります。

全身の血液は血管の中を運行しており、血液の運行は心臓の拍動による推動作用に頼っている状態にあります。

心臓が拍動することで血液推動され、血管内の血液は一定方向に流れていっているのです。

血管内を流れる血液は全身に巡り、各臓腑組織の正常な生理活動を維持します。

では、何故心臓の拍動により全身隅々まで血液が行きわたるのか?

実は私はこの点が学生時代からの疑問でしたが、中医学ではこのように解説をされています。

心臓の拍動に乗って心臓の気である“心気”が血液循環の推動の動力物質となっているのです。

気は水に属する血液の流れを先導する役割があります。

心臓の気“心気”がその役割を担っているということになります。

このように、心臓と血管は相互に連携して全身の血液循環に働き、各臓腑組織に栄養を行き渡らせているのです。

まとめ

以上、

  • 1,精神活動を主宰する
  • 2,人体の生命活動を主宰する
  • 3,血脈を主る

の3つの役割が心臓が“君主の官”と言われる由縁です。

どれも非常に重要なものであり、私たちの生命活動には必要不可欠です。

心臓に“君主”の役割を思う存分発揮してもらうためには、日常生活で心臓を養うことが大事です。

心臓を養う上で日常生活で意識してほしい点は、心の調整です。

自分の情志を調節して心が安定した状態にいることが心臓の養生ではポイントとなります。

シンプルですが非常に難しい心がけだと思います。

日々、ストレスが多くかかっている方でも1日に1回でも心が安定した状態を作ることができれば、身体にとっては良い状態が作ることができます。

このブログでも何度も言っている通り、心の安定は養生の基本です。

ぜひ意識してみて下さい。

参考文献:

常学辉 编著 「《黄帝内経》全解」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。