子午流注法

子午流注法 心包経 戌の時間帯(19時~21時)の養生

戌の時間帯は夜の19時~21時が該当します。

この時間帯は心包経の気が旺盛となります。

心包とは心臓を包んでいる内膜のことで心臓周辺の血管も含まれており、血行にも影響を及ぼしています。

心包の役割は侵入してくる邪から心臓を守るため心臓の組織を守る役割の他、気血が運行する重要な通り道でもあります。

そのため、心包経の働きが活発となる戌の時間帯は心臓周囲の外邪を除く働きが強くなり、心臓の状態を良くすることができます。

また、この時間帯は心包経が活発となる影響から脳神経の働きも活発となります。

心臓が弱い・疾患を抱えている方は戌の時間帯に心包経のツボ押しをすることで刺激を入れると良いと言われています。

では、これらを踏まえた上で戌の時間帯の養生について解説していきます。

戌の時間帯

戌の時間帯は夜の時間帯です。

とっぷり夜が更けるのもこの時ですね。

中医学では戌の時間帯は人体の陽気が尽きてきて、陰気が最も盛んになってくる時です。

心包経は五行属性の五情では“喜”が該当するため“喜”が養生のキーワードとなります。

中医養生では、戌の時間帯は心臓病を予防するのに有効な時間帯だと言われています。

心包経は心臓の周りを包む薄い膜で、血管をも含みますので心包経の働きが活発になると邪は心臓に侵入することができません。

この身体の中の邪を排毒するには最適な時間帯で戌の時間に養生を心掛けることで心臓病予防に効果があると言われています。

戌の時間帯は楽しく、のんびり過ごすこと。

前述の通り心包は“”が五行に該当していますので、喜ぶ・楽なことをして過ごすことが養生となります。

娯楽活動をするのに適しています。

娯楽とは言っても歌を歌う・カラオケ・ダンスといった類のものではなく、あくまでも夜寝る準備時間という意味合いもありますので、刺激が少ない静かな娯楽活動を意識すると良いです。

活動例を挙げますと以下のようになります。

  • 会食をするならお酒を飲み過ぎず、食べ過ぎず、静かに会話する。
  • 日常生活の人間関係・悩み・困りごとを友人・家族に話して整理する。
  • 恋人と話して心を穏やかになるようにする。
  • 静かに座ってお茶を飲む、読書をする。

といった心を穏やかに持っていける活動をすることで安神効果を高めることができます。

また、戌の時間帯は心気が活発にスムーズになってくれる分、記憶力が上がります。

戌の時間帯は1日の中で3番目に記憶力が良くなる・頭の回転が速くなるゴールデンタイムです。

心を穏やかにすることを心掛けながら勉強に励むと効率よく勉強ができると思います。

また、頭の働きも活発となるため勉強・読書が適していますが、この時に刺激の強い明りを利用しないことが養生では大事となります。

明りの刺激が強いと眼精疲労・神経衰弱を引き起こしてしまいます。

実はこれ、中医養生で問題となっていて眼の視力低下の他、照明の刺激により神経活動が乱れてしまったり、不眠症といった症状を引き起こしてしまうのです。

「夜寝る前はブルーライトを浴びないように、不眠の原因になってしまうから」とはよく聞きますね。

心を穏やかに、楽しく過ごすことが戌の時間帯の養生には大事なので、強すぎる照明・スマホのブルーライト等で目から刺激を長時間入れるのは避けるようにして下さい。

よくやってしまうけど、良くないですね…

また、静かに映画を見るのに適した時間帯でもありますが、中医養生では刺激の強い映画・映像を見るのは避けるように言われています。

戌の時間帯は睡眠の準備を身体がしなければならない時間帯なので、こちらも意識してみて下さい。

戌の時間帯の養生・ツボ押し

戌の時間帯は心包経が活発となるので体内にいる邪の排毒も行える時間帯です。

この心包の排毒にはツボ押しが良いとされています。

特に心臓が弱い・心臓病を抱えている方は戌の時間帯にこれから紹介するツボを押して養生することをおススメいたします。

膻中穴・強めに押す

膻中は胸の中央にある重要な経穴・ツボです。

中医では、“喜・楽の経穴”と言われていてマッサージでツボ押しをすると心を安定させてくれる・心臓周囲の気血の流れをスムーズにしてくれます。

特に心臓付近に違和感がある時に押すと、違和感を無くしてくれるツボです。

中国の中医養生の専門書には「膻中穴をたたくように押す」と手技が説明されていますが、強く数秒押す程度でと良いと思います。

◆膻中の位置◆

左右の乳首を結んだ線の真ん中、胸骨部。

労宮穴・合掌して精神統一

掌は多くの経絡が通るため、経穴がたくさん存在する場所です。

特に心包経の労宮は重要な経絡で心包経の気が最も溜まる所です。

中医気功では“静功”といい掌と掌を合わせて左右の労宮の気を通わすことで精神統一を図ります。

戌の時間帯は心を穏やかにするのに適した時間ですので、合掌して座禅をしながら1日のことを整理するのも良い養生習慣になります。

また、中国の中医養生の専門書には掌を拍手して叩くことで心経・心膜経に刺激を伝わらせて心臓の気をスムーズにさせることが出来る、と書かれているものもあります。

中国の養生は何かとツボを叩くことを勧めていますが、叩くと痛いのでゆっくりじっくり労宮を押す・マッサージする方法を私は推奨いたします。

その方が気持ち良いですものね。

◆労宮の位置◆

掌の中央。指を握ったとき中指の先端が掌に当たる場所

また、握りこぶしを作ることも手っ取り早い掌のツボ押しになります。

心を穏やかにする養生以外にも、気が張る場面でツボ押しをすることで緊張を解してくれたり、情緒を安定させてくれます。

握りこぶしを作る時も労宮の位置を意識しながら、指に力を入れると良いツボ押しになると思います。



ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。