陰陽五行

太陽の光を浴びる習慣を

黄帝内経をはじめとした中医養生では、いかにして“身体の陰陽を平衡にするか”といった内容が書かれています。

人の身体は自然界の恩恵を受けて生命を維持しています。

  • 自然界の日の光を受けて、空気中の精・栄養を摂取する
  • 身体の代謝で生じた余分な物を自然界に排泄する

といった、自然界で貰ったものを最終的に自然界に返すサイクルで私たちは生きています。

自然界の恩恵を受けて私たちは生きているので、中医学では人体は自然界と通じていることが根本に置かれています。

自然界の環境・気候の影響を受けながらも身体の陰陽を整えて陰陽バランスを平衡にすることが何よりも大事、と語られているのです。

古代養生の理想的な1日の生活は、太陽が出ている内は外で仕事・活動をして、太陽が沈めば身体を休ませるといったシンプルなものです。

しかし、私たちの現在の生活は1日外で作業することよりも机やパソコンに向かい等室内での活動が多くなってきています。

働く時間も多様で、現代は体内時計が狂ってしまっている方も多くいらっしゃいます。

今回は、身体の陰陽平衡を整えるために行ってほしい養生“太陽の光を浴びる”という養生を紹介したいと思います。

太陽の光を浴びることが身体の陰陽を整えることに、そして自然界の恩恵を受けて健康に繋げることが出来ることを“陽気の動き”を通して説明していきたいと思います。

1日の自然界の陽気の変化

自然界の陽気の変化は、朝日とともに陽気が動き出して万物の活力を蘇らせます。

日が上がって行くととともに大地の陽気は上へ上がます。

お昼時には太陽が地面に当たる範囲が広くなるにつれて、自然界の陽気も最高潮となります。

太陽が西に傾くと地表の陽気は徐々に消減していきます。

夜になると陽気は大地に収斂され(固められ)て、陰気の動きが活発となっていきます。

1日の人体の陽気の変化

人体の陽気は日中は体の表層にあります。

朝に太陽が出て自然界の陽気が動き出すとともに、人体の陽気の動きは活発となります。

時間の経過とともに身体の内側に入っていた陽気が外側へ動き出し表層を守る“衛気”となります。

お昼時になると陽気の働きは最も旺盛になります。

太陽が西に傾いてくる夕方になると体表の陽気は段々と少なくなり腠理(汗腺)の内側に入っていきます

日が更に落ちて夜になると腠理(汗腺)は閉じて陽気は身体の外側を守る役割ではなく、身体の内側に潜むこととなります。

自然界の流れに沿った生活が理想だけれども…

このように自然界と人体の陽気の1日の変化を見ていくと、人体の陽気の動きは自然界の陽気の動きに相応しているのがお分かりいただけると思います。

このような1日の陰陽の変化の動き、消長、そして断続的に続いている自然界の動きを通して陰陽平衡バランスを整えていくのが生命活動の根本であり、私たちの健康に繋がります。

人体の陰陽が平衡であると気血は充実し、精力は溢れ、五臓の状態は安定すると言われています。

逆に、生活習慣が乱れて陰陽のバランスが悪い・失衡の状態であると、病気になりやすく、早く衰えてしまうため寿命が短くなります。

大自然は私たちに恩恵を与えてくれます。

ですが、私たちの生活は昔とは異なり、外で活動をする機会が減ってしまいました。

机に1日中向かう生活であったり、室内で過ごす方も多いと思います。

中医学では自然に相応するのが健康に良いという考えから、陰陽平均を維持するには自然の気を吸収して自然界の1日の流れに沿って生きるのが一番だと言われています。

しかし、多忙な私たちの生活は気を浪費してばかりいて、気虚に偏ってしまっているのも事実です。

そこで、気虚体質の人に意識してほしい習慣があります。

それは太陽の光を浴びることです。

前述の説明の通り、人の身体は自然界の気の動きの影響を受け、自然界の恩恵を受けて生命を維持しています。

では、自然界の陰陽の気の動きの規則を利用して養陽・養陰をすれば良いのです。

なぜならば、自然界の陰陽の動きは陰陽気化が平衡となっている状態の表現でもあります。

では、その自然界の陰陽平衡の恩恵を受ける手っ取り早い養生方法は太陽の光を浴びることなのです。

太陽の光を浴びて日の光を吸収する方法

身体の陰陽を整える以外にリズムを整える一貫として朝・昼・夜と1日3回太陽の光を浴びることをお勧めします。

1日中太陽の光を浴びる必要はありません。

朝・昼・夕方の1日3回、外に出て太陽の光を浴びて下さい。

ちなみに中国の中医師達は「1回20分は外に出て太陽の光・自然界の精気を吸い込むことが養生では大事」と教えてくれました。

20分が理想の様ですが、そこまで時間が取れない方は短い時間でも外に出てリフレッシュ感覚で日の光を浴びてみて下さい。

では、朝・昼・夜の日光浴のポイントを書かせていただきます。

朝:

日の出とともに東の方向を向いて深呼吸をします。

自然界の陽気が鼻を通して身体に入ることで腠理が開き陽気を吸収する動きが出てきます。

昼:

正午になると日は最も高い位置にあります。

外に出て太陽の光が後頭部に当たる位置で光を浴びて下さい。

“百会”という頭頂部にあるツボを通して日の光を吸収することで更に人体に陽気を取り入れることができます。

夕方:

夕焼けで日が落ちてくる時に外に出て、1日最後の太陽の光を浴びて下さい。

また、気功の世界では朝日を浴びることは非常に大事な事で、朝日の光は強烈な陽気で陰の邪を寄せ付けない力があると言います。

中国で出会った練功を習慣としている中医医療スタッフのお爺ちゃんは「朝の内に運動をしておくと朝日の強い陽気を身体に取り入れられる」と説明をしてくれました。

よく健康番組を見ていても「身体のリズムを整えるために太陽の光を浴びよう」「体内時計を整えるために太陽の光を浴びよう」と伝えられています。

私はその背景には身体の陰陽が整う中医学の根拠がある、と見ているので晴れた日の日光浴は習慣としています。

皆さんもぜひ、生活の中に取り入れてみて下さい。

参考文献:

《图解经典》编辑部 编著 「图解 黄帝内经 中国养生第一书」

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。