中国での体験

中西医結合医療クリニックでの私の業務

中国で中西医結合医療クリニックにいた時の業務について書きます。

渡航医療クリニックで中国に住んでいる外国人を対象としている所です。

西洋医学科と中医学科の2つに部門が分かれていて、総合診療医が症状に合わせて患者さんを西医治療か中医治療に振り分けていました。

私の医療資格・経験は作業療法士ですので西医リハビリテーションのでどのようなことをしていたのかを書きたいと思います。

中西医結合医療現場での私の役割と中医科との交流

中国に住んでいる外国人専門のクリニックでしたので私は日本人、ということで中国に駐在帯同している日本人女性を対象にリハビリテーション業務をしてきました。

日本での私の経験は脳外科リハビリテーション業務でしたが、ここでは整形外科系のリハビリテーション業務担当です。

リハビリテーション室は5畳ほどの部屋でベッドが1つの個室。日本のリハビリテーション室と比較すると狭い所でした。

私の患者さんは腰痛症、肩関節周囲炎、テニス肘、骨折後リハビリテーションの方々を担当してきました。

その当時は中国に来る日本人の年齢が30代の方々が多く、帯同する奥様方の年齢も30代前半が増えてきていた時期です。

なので、腰痛症や肩関節周囲炎の患者さんは小さい赤ちゃん・未就園児を抱えたママさん達が多かったです。

皆さん小さいお子さんの慌ただしい子育てに抱っこ、引っ越しの疲れ、海外生活の疲労蓄積で腰痛症になっている人が多く…。

基本私の方で整形外科治療した後に、中医にも興味がある方がいれば中医リハビリ( 中国では康复治疗 カンフージーリャオと言う)も受けてもらう方もいました。

中医科に流す基準は症状が慢性であることと、整形外科系の症状が治っても他の体調不良が治らない、もっと強いマッサージを受けたい、といった希望があった方です。

中医康复治疗师(中医リハビリする人)のおじいちゃん先生は中医推拿、刮痧(カッサ)、拔罐(カッピング)を使って1人1人気を込めて治療をしてくれていました。

身体の湿気を抜く、気を発散させる、骨格治す、元気の出る経絡治療をする、といった全身調整をしてくれていたようです。

中医康复治疗を受けた患者さんが「身体がスッキリした」「元気になった」「なんか気合が入るようになった」という感想を聞いて私自身中医推拿に興味が出てきて、おじいちゃん先生と技術交流をさせてもらっていました。この技術交流、かなり楽しかったです。

中医科とは関りができましたが、西医リハビリテーション同業者とはあまり関りがありませんでした。

個人主義なのか、腹の内は見せないスタンスなのかギスギスした雰囲気で……非常にやりにくかったです。。

私は日本では整形外科の経験をあまり積んでこなかったので困った時の相談相手が同業者にいなかったため、一時期非常に悩んだ時期がありました。

日本の病院では当たり前のように同業者に相談できていたのに…。当たり前のように同業者に相談相手がいるのは本当に幸せなことです。

その時に通訳さん、総合診療医のドクター、 中医康复治疗师のおじいちゃん先生が力になってくれて非常に心強かったです。

この3人は私が後に中医の方向に行くことも応援してくれた方々です。

特に通訳さんは中国語が片言、中国の医療現場の動き方が分からなかった私に優しくアドバイスをくれて、先導をしてくれて…本当に感謝でいっぱいです。

なんだかんだで振り返ると、私も右も左も分からない中人に支えられてやってこれた日々だと思います。

感謝感謝。

中国の駐在員医療の実態

海外に住んでいる外国人が先ず抱えるのは言葉の通じない孤独です。

クリニックで駐在員、帯同家族の医療に関わっていて感じたことは、

精神疾患であるうつ病、ヒステリーを抱えている日本人が異様に多く、それが理由で本帰国になる方も少なくなかったことです。

5年前当時の中国の医療は精神科がありませんでした。(今はどうなっているか分からないですが…)

中国に引っ越してきたばかりで小さい子を抱えているママさん達は右も左も分からず、頼る人がいない方ももちろんいます。そういった方々は不安が引き金で腰痛、頸部痛がひどくなっている方もいました。

頼る人がいなければ旦那さんに頼れば?と思う方もいると思いますが、

日本人駐在員は大体激務で自分のことで精いっぱいで……家族を顧みずに働いている男性が多い状況でした。

そのため「旦那が忙しすぎて相談できない」とリハビリ室で泣き出す患者さんもいました。

こればかりはリハビリ室で傾聴する対応しかできませんでしたが、せめてクリニックに精神科・心療内科系のカウンセラーがいて患者さんが悩みを話す場があったらいいのに…と思ったものです。

私の患者さんに赤ちゃんを抱えたママさんで、症状がひどくて日常生活もままならない方がいました。

もちろん旦那さんも激務で、頼るところもなく精神的に非常にまずい状態だな、と感じたのでできる限り寄り添うように関わっていたのですが、同業者から「関わりすぎだ」と怒られたこともありました。

リハビリテーション治療をしてきたけれど作業療法士ならではの精神的なフォローはできず、はじめての海外医療では技術的にも未熟すぎて自分の無力さを感じたものです。

以上が渡航医療の中西医クリニックで私がやってきたことになります。

今はクリニックに変化があるのか情報が取れてないので分かりませんが、何か皆様の参考になりましたら嬉しいです。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。