中国での体験

中国人の暗記能力は凄い!

中国の中医診療所でお勉強をさせていただいた時の話をします。

医療系の仕事に就いている方はご存じかと思いますが、医療系の勉強は暗記が多いですよね。

私はもともと専門がリハビリテーションでしたので、学生時代は暗記に明け暮れた日々でした。

中医学も同様で膨大な量の暗記をせねばなりません。

中医診療所にいた時、中国語で新しく覚える中医用語や経絡・生薬・症状表現の暗記に非常に苦しみました……。

一応、中医の勉強は診療所の臨床から中医基礎→診断学→経絡→中医薬といった順序で中医師に教わってきました。

私はもともとリハビリテーションの職業について経験を積んでいたので、経絡系は東洋医学系の勉強会に出たり、独学で勉強もしていたので経絡系の暗記はなんとかクリアしました。

しかし、後半に学んだ中医薬、生薬の暗記は非常に時間を要してしまいました。

いや、現在進行形で未だ完全に全部で200種類の生薬は覚えられていません。

中医学生が使う暗記本を買ってよく使っていました。

中医診療所時代、先ず師である李医師に出された課題は4字熟語で生薬の名前と効能を覚える方法でした。

药性歌と言って1つ1つの生薬の性味、帰経、効能を4つまとめの4字熟語で覚える方法です。

001.人参味甘,大补元气,止渴生津,调营养卫。

002.黄芪性温,收汗固表,托疮生肌,气虚莫少。

003.白术甘温,健脾强胃,止泻除湿,兼祛痰痞。

004.茯苓味淡,渗湿利窍,白化痰涎,赤通水道。

005.甘草甘温,调和诸药,炙则温中,生则泻火

医学教育网 「中医执业医师中药药性400味口诀大全」より引用

これで200種類を暗記します。

↓興味がある方はこちらのサイトに全て載っていますので、どうぞ。↓

中医执业医师中药药性400味口诀大全,赶紧收藏吧! (med66.com)

中医系の学生もこのようにして覚えると聞き、暗記にトライしてみました。

しかし、びっくり。これ200種類も中国語で暗記せねばならないのに与えられた時間は2週間でした。

「短すぎる!!!あたしは家庭もあって家事もせにゃいけないのに無理!」

と抗議しましたが、李医師、若手中医師は2週間で覚えた、と集団でドヤ顔で言われたので2週間でやる羽目になりました…。

その間に、家事・食事中もイヤホンで中国の中医学生が暗記で使う4字熟語の中医薬学の録音を聞きながら覚える努力をしてみたのです。

その当時、娘は幼稚園児だったのでイヤホンを片方の耳で聞きながら、娘と会話をしていました。

(この時期、きっと娘に寂しい思いをさせちゃってたなぁ…)

2週間後、中医師の覚えているかチェックを迎えました。

「覚えた内容を何も見ないで最初から言いなさい」と李医師に言われ、いざ何も見ないで言ってみると20種類しか言えませんでした…。

李医師はプンプンでした。目が猛禽類みたいで恐ろしかった……。

その後1か月与えられましたが、結果20種類+アルファしか覚えられず、李医師は叫ぶ猛禽類になりました。

中国では技術系の師弟関係は厳しいので怒号、体罰はあたりまえです。

私は師から冷たい視線と怒号で済みましたが、若手中医師の莫からは「私の師は間違うとビンタされたよ。優しくてよかったね」と囁かれました。

ちなみに李医師は仏教の生き方を心掛けています。

怒号で怒られたので「仏教徒は怒らないんじゃないですか?」と反論すると「俺は怒ったことはない!!」とプリプリ言われました。

怒ってんじゃん…。

そこで、現役の広州中医薬大学生、卒業生に助けを求めました。

彼らに聞くと、大学でも1人1人暗記のテストがあるそうで。

先生が生薬を出したら、その性味・帰経・効能を言えなくてはなりません。

↑広州中医薬大ではこの状態で先生が生薬を出してくる。テストでは1つ1つ言えなくてはならない。

彼らは「1か月間、四六時中録音を聞いてなんとかクリアした!お前もがんばれ!」と気合と根性のアドバイスをもらい、再び家事・子育てをしながらの暗記地獄に入りました。

しかし、中国語で暗記…

中国にいる間、生薬だけはできなかった……チーン。

後から知ったことですが、中国の教育は幼少期から暗記中心に詰め込んでお勉強をします。

娘も香港系の幼稚園に通っていましたが8:30~16:30まで中国語と英語でお勉強のスケジュールでした。

お陰様で娘の集中力は小学生の今でもあるようです。暗記も九九は早かった…。

中国の教育は意味を理解する前に暗記することが求められるようです。

幼少期から暗記に慣れている中国人の学生、若手中医師の彼らは本当に凄かった…。

あの暗記教育のペースには恥ずかしながらお母ちゃん、ついていけませんでした。

これから中国に中医留学をする方は、中国人の暗記速度は物凄いものですので気を付けて下さい。

彼らと同じペースで暗記をするのはスタンダード日本人でしたらなかなか難しいです。

今は生薬を暗記から中国語で覚えるのは不可能だ、と悟ったので、自分のペースで中医薬・方剤を講義を聞きながら学んでいます。

やはり1つ1つ講義を聞いて意味を知ってから覚えるのが私にとって一番いいペースのようです。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。