中医解説

中医学で言う毒とは何か?

私たちの体内にはたくさんの毒素が存在しています。

一般的にその毒は体外に排出しないと身体と精神は毒を含んだ不良な物を産生してしまいます。

その毒が身体に与える影響は、瘀血、痰湿、寒気、食積、気鬱、上火といった症状を引き起こしてしまう原因となってしまうのです。

毒が五臓六腑に蓄積されてしまうと内臓の老化を早めてしまう、そして皮膚・筋肉・神経といった我々の身体を構成している器官の老化も早めてしまうのです。

かつて古代は“毒”というのは食べる植物に使われていた言葉でした。

人体に害を及ぼす植物、キノコなんかが該当しますね。

しかし、現代では社会が発展するにつれて“毒”は様々な角度から見出すことができます。

中医学と西洋医学では“毒”と言われるものが若干異なりますが、身体から排出しなければならない物がどちらも該当します。

今回はこの毒について、中医学ではどのようなものが該当するのか解説していきたいと思います。

中医学で言う“毒”の概念

中医理論では“毒”は広範囲にわたります。おおまかに以下の3つに分けられます。

1,五邪:内風、内寒、内湿、内燥、内熱

臓腑、組織、器官の失調による病理変化。

2,外感六淫:風、寒、暑、湿、燥、火 

季節による自然現象で身体に侵入してしまい陰陽失調を起こしてしまう物。

3,内傷七情:喜、怒、憂、思、悲、恐、驚 

七情の感情の変化。強い感情は身体にも影響を及ぼしてしまう。

    ↑内傷七情についてはこちらの記事で解説をしています。

他に飲食の不摂生や過労が原因で陰陽失調が引き起こされます。

これら身体の陰陽バランスを損なってしまうもの全てに“毒”は当てはまります。

以前、病因となる“邪”についても書きましたが同じような概念で“邪”と“毒”は通じるもので、“邪”は病気の要因で直接人体に害を及ぼすもの、“毒”は人体の陰陽バランスを崩す要因となるもの、と捉えていただいて良いと思います。

毒の種類

1,熱毒:

陽気が高ぶっている時は人体内に熱毒が産生されやすい状態です。

“上火”という状態で“上火”とは熱が身体の上部分に上がっている状態をいいます。

極端に言うと“のぼせ“とも言われ目の充血、口渇、鼻血が出やすい、便秘などの症状が出るものです。

これは熱が上半身に偏るので下半身は冷えてしまう傾向にあります。

頭を常に働かせなくてはいけない現代人は“上火”になりやすい状態であり、中国では“上火”に特化した薬膳茶が売られています。

「上火になったら飲もう」と売られています。
2,火毒:

熱毒が人体に蓄積されてしまうと火毒となってしまいます。

症状は発熱、頭痛、焦燥感、小便短赤、大便が硬い、舌が紅くて苔が黄といった症状で熱による風邪の症状です。

3,寒毒:

熱毒とは相対的なものです。外寒・内寒の2種類に分けられます。

外寒は風寒が侵入することで引き起こされる風邪や関節痛といった外的要素が要因となるものです。

内寒は体内の陽気が虚となることで内臓機能が衰弱し四肢冷え性・末端痛、腰・腹痛といった症状が出ます。

4,湿毒:

湿毒も外湿・内湿の2種類に分けられます。

外湿といって湿気の多い季節・環境ですと脾・胃は湿気に弱いのでダメージを受けてしまいます。飲食不摂生になるやすく、胃腸風邪、皮膚のアレルギーを引き起こし易くなってしまいます。

内湿脾胃虚弱により脾胃の消化・運化が上手くできないと正気不足となってしまい、外湿を身体に侵入させてしまいます。更に脾胃の機能が弱まるため食欲不振、腹張、下痢、浮腫といった症状が出てしまいます。

5,食積毒:

脾胃は食物の消化・吸収・輸送の働きがありますが、その機能が失調してしまうと消化不良となってしまいます。

日々消化不良状態が続いてしまうと胃の中に食物の毒素が蓄積されてしまい、脾胃に損傷を与えてしまいます。

食欲不振、胸悶(胸部が張って不快感が出る)、便秘といった症状が症状が出てしまいます。

6,瘀血毒:

瘀血とは血液の運行失調により血の流れが悪くなり、滞っている状態です。

瘀血が解消されないと経絡の気・血・水の流れも停滞し気・血の循環が不十分となってしまいます。

瘀血部分は身体を押すと痛い、血色がよくないといった異常が生じます。

この循環不良のため毒の排出ができず、停滞してしまう身体となってしまいます。

7、薬物毒:

中国では昔から“薬の3割は毒”と言われています。

薬の毒は複雑で、飲むと解毒作用のある肝臓に負担をかけてしまっています。

西様医学の薬は毒の副作用があることは明らかとなっています。

中医薬も副作用で毒が含まれるものもあります。

そのため、薬の特性を良く知った上で必要な分最小限に飲むことが良いとされています。

8,情志毒:

情志とは、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七種類の感情変化です。

七情と言われるもので、私たちが外界で起こったことに対する心理反応、感情です。

中医ではこの七情の情志は五臓の気によって生じると言われており、情志が失調してしまうと臓腑もダメージを受けてしまい、気血の流れにも影響が出てしまいます。

感情は度を超してしまうと身体を傷つける健康を損なうものとなってしまうのです。

まとめ

以上8種類が中医学で毒と言われているものです。

健康やダイエットにおいて“デトックス”という言葉が使われるように、私達現代人は気を付けていない限り体内に毒が蓄積されてしまっています。

これは内臓にダメージも与えますし、気・血・水の循環の流れにも影響していまいます。

そのため、疲れやすい、疲れがとれない、痩せにくい、虚弱体質といった身体となってしまうのです。

デトックスは一般的に、食事や水,運動で汗・尿・便で排出する対策が取られます。

また、中医では睡眠も大事で子午流注法で陰の時間帯に睡眠をしっかりとることで排毒を更に促進することもできます。

最近では子午流注法を制すれば毒を排毒する身体を作ることができる、という書籍も中国でたくさん出てきています。

毒を排出できる身体の作り方については、中医養生において非常に大事な身体の基礎作りですのでこれから子午流注法関連の記事を通してもっと解説していきたいと思っています。

子午流注法|宏福中医研究会 (koufuku-chui.com)

↑子午流注法関連の記事はこちらにアップしていきます。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。