中医解説

中医学でみる睡眠障害

前回は子午流注における子の時間帯23時~1時までの養生方法について書きました。

子の時刻は陰気が最も盛んになる時間帯で陽気が少しずつ出てくる時間帯です。

そのためこの時間帯は静かに布団で眠っているのが良いとされています。

通常な生活リズムの人は床について寝ている時間だと思います。

養生の観点からだと子の時間に熟睡していると身体の回復が早い、脳にも良い影響を与えて次の日に集中力がアップさせることができます。

詳しくはこちらの記事をご参照下さい。

今回は23時前に寝たくても上手く寝れない方のために何故眠れないのか睡眠障害の原因を分析してみました。

入眠困難や中途覚醒は日中の活動にも大きな影響を及ぼしてしまいます。

慌ただしい現在では5人に1人が睡眠障害を抱えていると言われています。

原因は各々の生活習慣やかかっているストレス・精神的要因だとされていますが、中医学では睡眠をどのように分析・捉えているか書いていきたいと思います。

すぐに実行できる養生方法も記載しますので参考にしてみて下さい。

営気不足による睡眠障害

営気の不足によって生じてしまう睡眠障害です。

営気とは血と共に脈中を流れる気のことです。脾胃によって飲食物から産生されます。

□寝たくても眠れない

□夢を多く見る

□健忘(忘れっぽい)

□集中力が続かない

□焦りやすい

□動揺しやすい

□力が入らない

といった症状が見られます。

このような方には中医では益養精血の治療方針がとられます。営気不足させないために血を元気にする方法です。

養生方法としては、脾胃の消化器の状態を整えて、なるべく栄養価が高く新鮮な物を食べるようにしましょう。

この時に電子レンジ調理のものは避けた方が良いです。

また、考え事や心配事をせずにリラックスするように心がけてみて下さい。

中国ではナツメを多く食べると良いとされています。

気滞による睡眠障害

肝の疏泄(気が滞らず伸びやかに流れていること)が上手くいかず、気が滞る気滞症状によって引き起こされる睡眠障害です。

□入眠困難

□腹張

□考えが乱れる

□日中は抑鬱気分

□胸脇張痛

といった症状が見られます。

中医では疏泄肝鬱といった治療方針がとられます。気の滞り解消のため肝臓を調整して気の滞りをとる方法です。

このような症状が出る方はお腹や脇部分が硬くなっているのが特徴です。

養生方法として、寝る前に自分で硬くなっている部分又は冷たい感触があるお腹・脇をマッサージをして筋肉をほぐすと安心感が得られて寝つきが良くなります。

治すには精神をケアすることがカギです。心配事を無くし緊張をとることを意識すると良いです。

血中の熱による睡眠障害

血液の中に熱があることで睡眠障害となっている症状です。

□寝てもすぐに覚醒してしまう

□唾液が少ない

□焦ってしまう

□寝汗をかく

□時折手足が震える。

といった熱による症状が主となります。

中医では涼血清営といい、血液中の熱を冷ます方針がとられます。

このような症状の方は寒涼性のお茶を多めに飲むと良いです。寒涼性のお茶は緑茶が良いとされています。

冷たいまま飲んでしまうと脾・胃に負担をかけてしまうので体温よりも高い温度で飲むようにして下さい。

また、ツボ押しも効きます。

神門、後溪の各ツボを5~30秒ほど何回か押してみて下さい。力加減は痛気持ち良い程度に押すと良いです。

           神門穴 場所:手首の横じわ小指側の少しくぼんだ場所にあるツボ。

                  安心感を得ることができます。

          後溪穴 場所:手を握ったとき、小指側の小指の付け根部分のしわの先端部

                  筋肉の緊張を緩めてくれます。

脾・胃による睡眠障害

脾・胃の影響により睡眠障害が生じた場合は

□夜になると不安になってしまう

□寝てもすぐ覚醒してしまう

□夢を多く見る

□胃の調子が良くない

□大便の不形成

といった症状が出てしまいます。

中医では脾・胃の状態に応じて消化器を整えていく治療方針がとられます。

脾・胃の不調には原因が様々ですが、消化器に負担をかけない食事やお腹を冷やさないで温かくすること、心配事を無くしてゆく習慣をつけると良いです。

心肝の火による睡眠障害

心肝の火が旺盛となってしまうと

□眠れず徹夜状態

□目赤

□頭痛

□口渇

□焦りや焦燥感

□便秘

といった症状が出ます。

中医では対処法として心と肝の熱を取っていく清熱瀉火の治療法が取られます。

こちらも原因が様々ですが心・肝の熱は興奮と近い状態ですので気持ちを落ち着けるよう心掛けてみて下さい。

まとめ

このように身体の循環のリズムが崩れてしまうと睡眠障害となってしまいます。

今回は中医学で5種類の睡眠障害を紹介させていただいましたが、他にも原因となるものは数多くあります。

上記の睡眠障害に当たる方は、ご自分の体質に合った漢方薬を処方してもらって内側から改善する、又は東洋医学系の鍼灸や整体で身体のバランスを整えてもらうといったツールを使って改善しても良いと思います。

睡眠障害は日中の活動にも影響を及ぼし、ストレスが蓄積されてしまいます。

身体に負担をかけてしまう為、作業効率が下がる、免疫力も弱って風邪もひきやすくなってしまう等様々な症状が出てきてしまうので早めに改善されることをオススメいたします。

ABOUT ME
中医セラピスト・伊藤
中医セラピスト・伊藤
作業療法士として脳外科のリハビリテーションに携わった後、中国に渡り中西医結合医療現場にて渡航医療のリハビリテーションに携わってきました。この経験をきっかけに中医科に興味を持ち、 広州市の邦里国際医療団に所属。中医師助手として老中医師から中医基礎・臨床を教わってきました。 5年間中国で経験を積ませてもらい、現在は栃木県宇都宮市で中医関連の仕事をしています。 本場中国で教わってきた脈診、陰陽五行理論を使った経絡治療を得意としています。 ブログは中国でお世話になった方々の支援を得ながら書かせていただいています。